もう40年も前になりますが、法政大学三曲会の部室での事です。私はもう卒業していましたが、私の人徳になつき心からの尊敬をしめす後輩達と談笑していた時です。次の土日に何処かへ旅行に行こうという話になりました。
「新島はどうですか、不純異性行為のメッカですよ。」 本当に話程の事が有るんかいな?
「新島にナンタラいう橋が有るんですと。その橋を渡り始めてですな、渡り終えるまでにはドンナヤツでも相手が見つかるそうですよ」。
オイオイ、マトモな話なのかよ。 「そう週刊誌に書いて有りましたよ」。 フ~ム、週刊誌に書いて有ったからには本当だと考えて良いな。よし、じゃあ、次の土日は新島に行こう。
ドッと挙がる歓声。希望者を募ると5人ほどになりました。
新島って、東京の南に連なる伊豆七島の一つで、その頃は全国的に大変有名だったんです。でも、その前も後もクサヤくらいしか知られていません。多少の知識の有る人がドモ安とか抗火石とか言うくらいでしょう。ところが40年前だと「知らない」と言う人は実は知っていてトボケテいる人。そのくらい有名でした。当時の別名「セックスアイランド」。
結局、新島へは行かず伊豆大島に行きました。その翌年もまた5人希望者がいたんですが、やはり大島になりました。どうしてそうなったか、詳しい経緯はもう憶えていませんが、当然私以外にはマトモな人間は一人もいません。考えられる事は、もし駄目だった場合。いくらヤツラでも「新島に行ってすら駄目だった男」の汚名には耐えられなかったのでしょう。
新島の住民は「あまりに不名誉」というので、島の人達が観光客に注意喚起した事で、いつしか収まりました。20年ほど前に家族を連れて1週間海水浴に行きましたが、海岸ではナンパナンパでしたが、もう普通の若者の集まる海水浴場になっていました。
思うに、「不名誉だ。皆で力を合わせて撲滅しよう」と立ち上がった人達いる一方で、「若い者が大勢来てくれるんだもの、別に良いじゃないか」と考える観光業者だっていたはずだと思うんですよ。
「風儀が乱れる」という事が、はたして本当に不名誉なことかどうか?そういう難しい話をしているんじゃなくて、「静かな島の生活を取り戻せた」と喜ぶ人達がいる反面では、「客が少なくなって仕事が立ち行かなくなった」と嘆く民宿や食堂の経営者だっているという事です。
同様の話ですが、やはりその頃ですよ、横山勝也先生が「初めてシャクハチという言葉の別の意味を知った時は、屈辱で身も震えるほどでした」とおっしゃいました。
そのうち気持ちが収まってくると「尺八が言葉だけでも人々の認識から消えていかない効力も有るのかな」に落ち着いたと言います。私は、無論「名誉だ」とは思いませんが、島と違ってキャンペーンをはったからって別にどうなるものでもなし、外国の名誉が絡むものでもないので、トルコ風呂をソープランドに変えられたケースの様には行きっこない以上は、「泣き寝入りするしかないのだろう」と思っていました。でも、何とか出来たら良いとは思いましたよ。
かつて尺八界への女性の参入の為の障壁として、師匠達を悩ませていた「シャクハチ」。この言葉は「女性には尺八は向いていない」という低能評論家のタワゴト以上に女性入門のハードルを上げて来ていたのかも知れません。でも、すでに遠い昔の話になりました.。
「そうだよな、今の女性は強いし、だいいち今みたいに外国人が多くなってくると、はじめから知らないから関係無いよな」、ですって、さにあらず。あるアメリカ人が言ってましたよ。「シャクハチ、アメリカでも結構有名だよ」。だってさ・・・。
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