3Ⅾ時代(後半)
- 2018/04/06
- 11:02
今年の1月に香港教育大学の松信教授がお立ち寄りくださいました。何でもソウルで学会が有るとかで、空港に行く短い時間にお寄りいただいたのです。そこで最新の3Ⅾ尺八を見せていただきました。説明もじっくり受けましたが、結論、「もう仕事として成立する」。
それから何人かのお客さんに訊きました。尺八界って有難いですね。どんな分野にも専門家がいる。私自身はマア他人に自慢できるのは顔くらいですが、相談できる専門職の人はどんな分野であれ5人以下という事はありません。尺八で40年近く生活してきた何よりの収穫です。
そして「いける」という感触が深まりました。自営業者は大体がそうでしょうが、7割方目途が着けば実行に舵をきります。これで言うと9割目途の3Ⅾ尺八ですもの、やらないはずが無いでしょう。
設計は我が社の技術コーチの林鈴麟さん。林さんは学者タイプの人なので、これによる利益獲得より、「3Ⅾ尺八の実現により、これまで謎だった尺八の根本原理の解明が大きく進歩する」、その事の方に心を揺すぶられた様です。
尺八の音波発生の原理については、すでに99パーセント解明されていると言って良いでしょう。50年前の「材質がどうの」と言ったレベルの発言は、もう30年前でも専門的な学術レベルでは言う人が皆無でした。何故なら計測機器の発達により、その時点で「尺八が鳴っている時には材質は無反応」という事実が知られていたからです。理論的には、その数十年前にも証明されていました。事は自然科学ですから「こう有って欲しい」の思い込みとか「私には分かる」の「超能力」とかは一顧だにされません。
でも、だからと言って、その音が発生する瞬間、「何百分(あるいは何千、何万)の1秒の世界」については人によって解釈がなお違います。確定未満の世界です。
言っておきますが、「人によって」と言うのは、たとえば私みたいなのがドカタ飲み屋で酔って口走っている様な事を意味するんではないですぜ。
勿論「その全容が3Ⅾ製作によって解明する」と言うのではなく、解明作業が大きく前進するという話です。林さんの高度に数学化された頭脳には、それがとても魅力的に映るらしいのです。
たしかに、どんなに内径設計を厳密にやったところで、手で作る以上は「手作りの範囲の厳密」でしか有りません。細部にわたる微細な内径の差異が、他の要素を排除した条件下で、どう吹き手に影響を与えるのか? どこまでが吹き手のポージングに原因が求められるのか?吹き手の思い込みがどの部分では客観性または普遍性を持っているのか?また、完全同一の内径下における歌口のコンマ以下における影響とか、林さんでなくとも興味をそそられます。
私は、と言えば「また志に一歩近ずける」と思っています。私は尺八を気楽な楽器にしたい。イイカゲンな気持ちでも始められる楽器にしたい。一大決心のもとに始める人が多かったであろう今までだって、別に他の楽器に比べて「高い境地」に行ってたわけではないし、残念ながら、むしろ逆ですらあるとも言える時代が長かった。それより底辺を広げる事こそが頂きを高くする、そういう考えでスタートした仕事です。
3Ⅾ尺八が安く出回れば、これまで1万円程度でも購入を躊躇していたカルチャー教室や学校でも採用されるケースが増えるでしょう。また、所得が日本人の2割程度といった中国をはじめとする発展途上の国の人達にも購入の可能性が高まります。
そうして広汎な地域で多くの人達が、中には途方も無い使い方をする人達もいて、そこで尺八は初めて「邦楽内の楽器」から大きく羽ばたけます。
私と林鈴麟さんとは、同じく楽器を製作する者として意見が一致する事が有ります。それは尺八の声なき声が聞こえるという事です。
「俺達尺八は邦楽をやるばかりの楽器ではないぞ。もっと俺達はいろんな事が出来るんだ。オレにもっとイロンナ事をやらせてくれ。誰かオレの可能性や能力を引き出してくれ」。
それから何人かのお客さんに訊きました。尺八界って有難いですね。どんな分野にも専門家がいる。私自身はマア他人に自慢できるのは顔くらいですが、相談できる専門職の人はどんな分野であれ5人以下という事はありません。尺八で40年近く生活してきた何よりの収穫です。
そして「いける」という感触が深まりました。自営業者は大体がそうでしょうが、7割方目途が着けば実行に舵をきります。これで言うと9割目途の3Ⅾ尺八ですもの、やらないはずが無いでしょう。
設計は我が社の技術コーチの林鈴麟さん。林さんは学者タイプの人なので、これによる利益獲得より、「3Ⅾ尺八の実現により、これまで謎だった尺八の根本原理の解明が大きく進歩する」、その事の方に心を揺すぶられた様です。
尺八の音波発生の原理については、すでに99パーセント解明されていると言って良いでしょう。50年前の「材質がどうの」と言ったレベルの発言は、もう30年前でも専門的な学術レベルでは言う人が皆無でした。何故なら計測機器の発達により、その時点で「尺八が鳴っている時には材質は無反応」という事実が知られていたからです。理論的には、その数十年前にも証明されていました。事は自然科学ですから「こう有って欲しい」の思い込みとか「私には分かる」の「超能力」とかは一顧だにされません。
でも、だからと言って、その音が発生する瞬間、「何百分(あるいは何千、何万)の1秒の世界」については人によって解釈がなお違います。確定未満の世界です。
言っておきますが、「人によって」と言うのは、たとえば私みたいなのがドカタ飲み屋で酔って口走っている様な事を意味するんではないですぜ。
勿論「その全容が3Ⅾ製作によって解明する」と言うのではなく、解明作業が大きく前進するという話です。林さんの高度に数学化された頭脳には、それがとても魅力的に映るらしいのです。
たしかに、どんなに内径設計を厳密にやったところで、手で作る以上は「手作りの範囲の厳密」でしか有りません。細部にわたる微細な内径の差異が、他の要素を排除した条件下で、どう吹き手に影響を与えるのか? どこまでが吹き手のポージングに原因が求められるのか?吹き手の思い込みがどの部分では客観性または普遍性を持っているのか?また、完全同一の内径下における歌口のコンマ以下における影響とか、林さんでなくとも興味をそそられます。
私は、と言えば「また志に一歩近ずける」と思っています。私は尺八を気楽な楽器にしたい。イイカゲンな気持ちでも始められる楽器にしたい。一大決心のもとに始める人が多かったであろう今までだって、別に他の楽器に比べて「高い境地」に行ってたわけではないし、残念ながら、むしろ逆ですらあるとも言える時代が長かった。それより底辺を広げる事こそが頂きを高くする、そういう考えでスタートした仕事です。
3Ⅾ尺八が安く出回れば、これまで1万円程度でも購入を躊躇していたカルチャー教室や学校でも採用されるケースが増えるでしょう。また、所得が日本人の2割程度といった中国をはじめとする発展途上の国の人達にも購入の可能性が高まります。
そうして広汎な地域で多くの人達が、中には途方も無い使い方をする人達もいて、そこで尺八は初めて「邦楽内の楽器」から大きく羽ばたけます。
私と林鈴麟さんとは、同じく楽器を製作する者として意見が一致する事が有ります。それは尺八の声なき声が聞こえるという事です。
「俺達尺八は邦楽をやるばかりの楽器ではないぞ。もっと俺達はいろんな事が出来るんだ。オレにもっとイロンナ事をやらせてくれ。誰かオレの可能性や能力を引き出してくれ」。
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