古屋輝夫さんをゲストに伴っての、今年2回目の上海展示会が1週間後にせまってきました。9月には私が佐野鈴霏さんを伴っての展示会。12月には永廣真山さんの今年2回目の展示会。11月か来年1月には小林一城さん、そして3月はまた私。一緒に行っていただく演奏家は「尺八世界一の男」岩田卓也さんです。この様に、現地、一音無心のスケジュールは1年後までギッシリ詰まっています。
「こう立て続けでは、いくら中国でも需要が尽きるのではないか?」と誰でも考えますわな。中国には巨大な尺八市場が有るのは確かですが、その需要の全貌は誰も知りません。私は、さも知ってるように買い被られる事も有りますが、知りません。本当です。日本人では私以上に把握している者もいないでしょうが、その私にしても「知っている」というレベルには程遠いです。現地の一音無心そのものが手探りでやっているのです。
私は尺八販売と同時に「尺八の文化伝道」を目的としていますから、常にプロ尺八家に同行してもらい、展示会と平行して演奏会と講習会を行っています。費用は謝礼を含めて全額私持ち。講習会、演奏会の収入は尺八演奏家と一音無心の折半です。
帯同する演奏家については、現地の希望では、当然ですけど、まず藤原道山さんなのです。でも、まだ無理です。彼がホリプロを離れて自由になったことは事実ですが、だからって謝礼が即半額になるわけないですし、半額になってもまだ駄目。三分の一になったら、ようやく私でも出せる相場になります。とにかく、あらゆる意味で藤原道山は別格なのです。
一音無心は「藤原さんが来てくれるなら、謝礼の応分負担をさせてもらう」と言っていますが、演奏会チケットって百元(千七百円)が上限なのです。一音無心のライブ会場はフルに入れても百人程度。私の上海の別の友人が美術館を持っていて、「そのロビーを使ってくれ」と言ってくれてますが、要はキャパの問題ではなく、「日本の尺八家としては最大の集客力を持つ藤原道山でも、上海で何人の人を入れらるのか?」という「尺八をビジネス面だけで見た場合の判断」が問題なのですわ。そして、尺八が文化産業である以上は、やはりそれだけではない。
マンツーマン講習会は1コマ(50分)が6百元と台湾の2倍ですが、1日に9コマが限界でしょう。団体講習会も1人6百元ですが、尺八の講習ですから、私は「20人程度が理想」と思っているのです。それは50人でも70人でも、やろうと思えばやれますよ。事実過去には70人でやった事も有りますしね。でも、多く入れて金が沢山入れば良いってものじゃないでしょう。「尺八文化伝達こそ重要」と考えないのなら、初めっから、私が費用を出してまで、尺八家を連れて行く意味も無いのですからね。
ですから現状では藤原さんの上海公演を実行するには、私とか一音無心の実力では無理なんですよ。
さて本題です。相次ぐ上海の尺八展示会で需要が枯れないか? そして将来的には藤原道山の上海公演は可能か?勿論、相手、藤原さんの都合や気持ちしだいですが、あくまで「当方の能力的には」という意味でです。
藤原道山に限らず、有名邦楽家の場合、時に50万、100万の謝礼を受け取ることが有ります。招聘先が地方公共団体などのオーガニゼーションレベルの場合には「予算」ですから話は別として、地方の三曲協会とか集金力の有る邦楽関係の会なんかでも、今は少なくなったとは言え、ビックリする様な謝礼が払われているケースがまだ有ります。切符が売れるはずが無いので、会員や御弟子が負担します。
それについてドウコウ言ってるんじゃ無いのですよ。もう間もなく無くなる仕組みに基礎を置いた、先の無い収入経路に頼らない、言わば「ビジネスとしての尺八の経済的自立」というテーマについての話をしているのです。これまでの保護産業という在り方を離れての生きる道についての模索です。
最初のテーマでは、すぐに誰でもが思いつくのは、展示会を上海1都市に留めずに中国全土展開をする事です。そうして私だけでは無く、小林さんも永廣さんも他の誰でもが中国展示会をすれば良いのです。尺八は「手作り楽器製造のビジネス」です。ですから需要が飛躍的に高まっても、工場生産と違って、それに対応して生産が飛躍的に伸びたりはしない。だから誰にとっても「独り占め」なんて出来ないんですよ。市場を拡げれば、私にとっても良いし皆にも良いのです。
その為の具体的な方法論は6月の上海行の時に先方に提示します。今回、邦星堂で群を抜くビジネス能力を持つ林嵐山が私の代わりに行くのは、その為です。これは「中国普及の正念場」ですから、私みたいなアマイ人間は引っ込んでいた方が良いでしょう。(念の為に言っておきますが、ヤツは一部の心無い人達からは、「梅毒庵」などという不名誉きわまる名前で呼ばれていますが、昔の事は知りませんが、現時点では罹患してはいません。脳梅で頭がイカレタ人間ではありません。誤解なきよう・・・。)
より難しい2番目のテーマ。ここで無理して実行する事は可能です。何故なら先方が「藤原さんを呼ぶためなら百万円でも2百万でも用意する」と、一年前ですが、言っていましたから。どうも一音無心は宣伝費と考えていたフシが有ります。でも、それはビジネスではない。「一過性の花火」に終わる懸念が大です。無理すると後が続きません。
でも私には何となく解決の方向性が見えているんです。これの問題は「集客力で藤原道山の上をいく尺八家はいない。でも、興行として判断すると、彼と言えども集客力に欠ける」という点に有るのです。前によく冗談です言われていた「尺八家中最高のギャラ待遇。そしてホリプロでは最低のギャラ相場」という事です。
ですから私ごときが僭越ですが、ホリプロ方式を見習うしかないでしょう。すなはち上海の他のもっと市場規模の大きい音楽畑で、「藤原さんと是非共演したい」と思っている音楽家はいるはずです。そういう人を見つけて、そこでの演奏会を合わせてお願いするしか無いのでは・・・。ホリプロという縛りの無くなっただけに可能なのでは・・・。
こと藤原道山というだけの問題としてではなく、尺八を中国で普及させようと思ったら、もう邦楽としての枠の中にいては無理ですよ。だって3月に予定されている売れっ子の岩田さんだって、これまでの中国公演は総て他の音楽畑からの依頼なんですもの。
これまでの邦楽のプロって、優しい邦楽人によって保護されてきました。でも、もう自立できないと危ない。
藤原さんに限らず、高額支出が予想される人の場合は、もうこれからは邦楽という狭い世界の中だけでは無理ですよ。外の世界に飛び出して行かないと、やれる事がドンドン小さくなってしまう。
事実、今の「売れっ子」と言われている人の尺八自体が、すでにして「邦楽を演奏する事も有る和楽器」ではないですか。
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