時間を問う
- 2018/11/10
- 17:49
25年くらい前ですかね、林鈴麟さんに訊いた事が有ります。「琴古で、ですよ。5孔を使っている尺八家で長澤勝俊の詩曲を吹ける人っているんですかね?菅原久仁義を除いてです」。
都山では邦山会になら何人かはいたでしょう。でも琴古だと私は菅原さんを除いては、いないと思っていました。林さんの答えは「北原鈴淳さん」。
北原さんは凄い音楽的な才能を持って生まれてきた人で、全盛期の尺八の吹奏力では同時代の三橋貴風、菅原久仁義に匹敵したかも知れません。プロにならなかった人ですが、もし彼が「プロになりにくい仕組みを持つ」鈴慕会でなく、フリーでプロになっていたら、私は三橋さんの域には行かなかったとは思いますが、それなりに成功したと思います。
北原さんは御自身のリサイタルで実際に5孔で「詩曲」を演奏して見せましたが、「5孔でやる必然性」は別にして偉業だと思います。5孔の「詩曲」だって、やろうと思えば出来るんです。よしんば私みたいな鈍才(謙遜ですよ、分るでしょう)でも。ただしスピードを倍にして、音程が正確でなければの話です。
北原さんの意見、「琴古でも僕以外にいたんじゃなかな、林(鈴麟)クンも出来たんじゃないかな」。私の感想、鈴麟さんは同時代の尺八家では日本屈指の音感を持った人です。音楽性も言う事が無い。でも、、「どうだ、オレじゃなっきゃ出来ねえだろう」という気迫に欠けますので、どうですかね、この曲は、そういう覇気が無いと5孔では無理な様に思うのですが・・・。
古典の難曲と言えば、まず都山の「八重衣」でしょう。都山の師範の人なら「八重衣」は試験曲ですから1度は練習したはずです。でも、この曲の「前ちらし」を実際に吹ける師範は、まずいません。「手の曲芸」です。
私の頃の法政大学三曲会では、まずプロの「八重衣」の演奏を聴きますな、それから自分で吹く場合、この部分をまずスピードを倍にして練習したのです。毎日毎日ここの「前ちらし」を吹いて、そして5日もすれば暗唱出来るようになります。そして2週間くらいで指定速度の8割程度にはきますね。勿論ロの大メリ、レの大メリはハ、ツです。でも、でも、そこからが上がらないのです。スピードも手捌きも。このブログを読んで下さっている都山の師範の方、貴方達のほぼ全員、95パーセントがそうだと思いますので、日頃大橋が嫌いな人でも、ここの所だけは賛同するでしょう。
どんな難曲であれ、曲として成立している以上は、師範レベルの技量も持つ人なら倍速でやれば吹けない曲は無いはずです。そして真剣にやれば、私の様に「天才にほんの少しだけ及ばない者」でなくても、容易に8割速は達成できると思います。ですが、85パーセント、90パーセントと上がる過程で、達成出来る人は幾何級数的に少なくなります。私の大雑把な印象では、「85速」で出来る人は「80速」達成者の1割。そして「90速」はそのまた1割くらいだと感じます。
そして「90速」達成者は、今度はかなりの高確率で「95速」、あるいはそれ以上に行くようです。「速い」とは言っても結局は邦楽ですからね。
それでは仮に大メリの音を本当に大メリを使えばどうなるのか?ここも「90速」を達成した人だとクリアできるみたいです。だって邦楽ですもの。でもプロのモデルとなる演奏が無いと難しいと思います。
この時間は不思議なモノですね。言っときますが、「相対性理論」で常識化した「時間の流れは一定ではない」、」とかの難しい物理学理論を云々ではありません。感覚的な事を言ってるのです。
今月号の「邦楽ジャーナル」に、砂崎知子さんが、亡くなった青木鈴慕先生と「尾上の松」を合奏して、「そんな速いの吹けない」と尺八を放り投げられた、そういうエピソードを語っています。砂崎さんの様な怪物的に速く手が動く人だと、邦楽の速度は、もの足りなく感じると思います。でも、それはそれ。
邦楽の心地良さを感じる速度は、これもまた人により差は有るのでしょう。でも、「名人だと大体同じ」とも言えます。「八重衣」だと大体30分の曲ですが、島原帆山先生は「米川文子、菊原初子の両氏と合奏したが、何度やっても5秒と違わなかった」とおっしゃっていました。私の若いころ、「もっとも速く演奏した場合で19分」と聞いた事があります。誰が言ったかは記憶が曖昧なのですが、倉橋容堂だったような気もします。それは別に良いですが、この「19分の八重衣」、アナタは聞きたいですか?私?一回くらいシャレで聞くなら聴いてみたいですね。
初心者ならチューナーやメトロノームを練習に使うのも良いでしょう。でも「音程を曲の中で聴く」、「邦楽の古典の場合、速度は厳密にはメトロノームでは表示出来ない」。ここが身に付くのは、本当は「八重衣を90速で吹く」より難しいのだと思います。でも、ここが、しっかり分かる人って、かなりの高確率で「八重衣」を90速で吹けます。だって「八重衣」を「目で吹いている」うちは「80速」だって、おぼつかないもの・・・。
都山では邦山会になら何人かはいたでしょう。でも琴古だと私は菅原さんを除いては、いないと思っていました。林さんの答えは「北原鈴淳さん」。
北原さんは凄い音楽的な才能を持って生まれてきた人で、全盛期の尺八の吹奏力では同時代の三橋貴風、菅原久仁義に匹敵したかも知れません。プロにならなかった人ですが、もし彼が「プロになりにくい仕組みを持つ」鈴慕会でなく、フリーでプロになっていたら、私は三橋さんの域には行かなかったとは思いますが、それなりに成功したと思います。
北原さんは御自身のリサイタルで実際に5孔で「詩曲」を演奏して見せましたが、「5孔でやる必然性」は別にして偉業だと思います。5孔の「詩曲」だって、やろうと思えば出来るんです。よしんば私みたいな鈍才(謙遜ですよ、分るでしょう)でも。ただしスピードを倍にして、音程が正確でなければの話です。
北原さんの意見、「琴古でも僕以外にいたんじゃなかな、林(鈴麟)クンも出来たんじゃないかな」。私の感想、鈴麟さんは同時代の尺八家では日本屈指の音感を持った人です。音楽性も言う事が無い。でも、、「どうだ、オレじゃなっきゃ出来ねえだろう」という気迫に欠けますので、どうですかね、この曲は、そういう覇気が無いと5孔では無理な様に思うのですが・・・。
古典の難曲と言えば、まず都山の「八重衣」でしょう。都山の師範の人なら「八重衣」は試験曲ですから1度は練習したはずです。でも、この曲の「前ちらし」を実際に吹ける師範は、まずいません。「手の曲芸」です。
私の頃の法政大学三曲会では、まずプロの「八重衣」の演奏を聴きますな、それから自分で吹く場合、この部分をまずスピードを倍にして練習したのです。毎日毎日ここの「前ちらし」を吹いて、そして5日もすれば暗唱出来るようになります。そして2週間くらいで指定速度の8割程度にはきますね。勿論ロの大メリ、レの大メリはハ、ツです。でも、でも、そこからが上がらないのです。スピードも手捌きも。このブログを読んで下さっている都山の師範の方、貴方達のほぼ全員、95パーセントがそうだと思いますので、日頃大橋が嫌いな人でも、ここの所だけは賛同するでしょう。
どんな難曲であれ、曲として成立している以上は、師範レベルの技量も持つ人なら倍速でやれば吹けない曲は無いはずです。そして真剣にやれば、私の様に「天才にほんの少しだけ及ばない者」でなくても、容易に8割速は達成できると思います。ですが、85パーセント、90パーセントと上がる過程で、達成出来る人は幾何級数的に少なくなります。私の大雑把な印象では、「85速」で出来る人は「80速」達成者の1割。そして「90速」はそのまた1割くらいだと感じます。
そして「90速」達成者は、今度はかなりの高確率で「95速」、あるいはそれ以上に行くようです。「速い」とは言っても結局は邦楽ですからね。
それでは仮に大メリの音を本当に大メリを使えばどうなるのか?ここも「90速」を達成した人だとクリアできるみたいです。だって邦楽ですもの。でもプロのモデルとなる演奏が無いと難しいと思います。
この時間は不思議なモノですね。言っときますが、「相対性理論」で常識化した「時間の流れは一定ではない」、」とかの難しい物理学理論を云々ではありません。感覚的な事を言ってるのです。
今月号の「邦楽ジャーナル」に、砂崎知子さんが、亡くなった青木鈴慕先生と「尾上の松」を合奏して、「そんな速いの吹けない」と尺八を放り投げられた、そういうエピソードを語っています。砂崎さんの様な怪物的に速く手が動く人だと、邦楽の速度は、もの足りなく感じると思います。でも、それはそれ。
邦楽の心地良さを感じる速度は、これもまた人により差は有るのでしょう。でも、「名人だと大体同じ」とも言えます。「八重衣」だと大体30分の曲ですが、島原帆山先生は「米川文子、菊原初子の両氏と合奏したが、何度やっても5秒と違わなかった」とおっしゃっていました。私の若いころ、「もっとも速く演奏した場合で19分」と聞いた事があります。誰が言ったかは記憶が曖昧なのですが、倉橋容堂だったような気もします。それは別に良いですが、この「19分の八重衣」、アナタは聞きたいですか?私?一回くらいシャレで聞くなら聴いてみたいですね。
初心者ならチューナーやメトロノームを練習に使うのも良いでしょう。でも「音程を曲の中で聴く」、「邦楽の古典の場合、速度は厳密にはメトロノームでは表示出来ない」。ここが身に付くのは、本当は「八重衣を90速で吹く」より難しいのだと思います。でも、ここが、しっかり分かる人って、かなりの高確率で「八重衣」を90速で吹けます。だって「八重衣」を「目で吹いている」うちは「80速」だって、おぼつかないもの・・・。
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